最初で最後の恋

家へ帰る途中。


「あれ?もしかして颯人君かしら?」


「え?」


急に呼びとめられる。


「そうですが・・・・」


「やっぱり!かなり前だけど、毎日パンジー。買いに来てくれてたわよね?」


「あ・・・・」


それは、俺が瑠璃の為にパンジーを買っていた花屋のお姉さんだった。


「お久しぶりです」


「そうねー。・・・・・あ!」


「なんですか?」


「ちょっと待っててね!」


そう言うと、走ってどこかへ行く。


少しして、すぐに戻って来たお姉さん。


「これ。瑠璃ちゃんって子に頼まれてたのよ」


「え・・・?瑠璃に?」


「いつか、颯人君に会ったときにね。渡してほしいって」


差し出されたのは、一輪のパンジーと、可愛らしい桜色の手紙だった。


「ぱったり来なくなっちゃって。渡す機会もなくて、ごめんなさいね」


「いえ・・・。ありがとうございます」




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