最初で最後の恋

「水瀬さん。あなたの娘さんは、脳に腫瘍があります」


小さかった私には、腫瘍がなんなのかわからなかった。


ただただ、お母さんがショックを受けているので、私もつられていた。


「まだ小さいですが、このまま大きくなり続けるでしょう」


大きくなる?


「ねぇねぇ、しゅよう、っておおきくなるものなの?」


お母さんの服の裾を引っ張った。


お母さんは答えてくれない。


「手術して摘出するにも、場所が場所でして・・・・・」


「どうしてですか?手術できないんですか?」


お母さんは、お医者さんにすがるように泣いていた。


「周りに複雑な血管がありまして、手術で傷める可能性があります。日本には、これを摘出できる有能な医者はいないんですよ」


「そんな・・・・・」


お母さんは泣いていた。


なんで泣いているかわからなかった。


「お母さん・・・・・?」


泣きながら私に抱きついてきたお母さん。


どうしたの・・・?


なんで泣いているの?


意味が分からないよ。



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