最初で最後の恋

それからというもの、颯人は宣言通り、毎日来た。


毎日毎日、一本の花を持って。


「今日も持ってきてくれたんだ」


「あぁ」


今日もまた一本。


同じ花が花瓶に加わる。


色鮮やかなパンジー。


いろんな色があって、とっても綺麗。


「また外の話。してよ」


颯人が来るたびに話してもらっている、外の話。


「今日は学校の体育でサッカーがあったんだ。俺、めっちゃ点決めたぜ」


「すごいね」


颯人がしてくれる外の話で、私の世界が広がった。


「陽が眩しすぎたかな、今日は」


「そうだね。今日はちょっと眩しいかも」


カーテンを閉めていても、病室の中に溢れてくる陽の光。


病室の中が明るくなる。


「なんか食いたいもんないか?」


「ううん、大丈夫」


いつも私のことを気にかけてくれる颯人。


日に日に想いは増すばかり。


けど、伝えてない。





< 31 / 160 >

この作品をシェア

pagetop