失恋のその先に
「それより、最近元気にやってるか?」
「うん。まあまあかな」
常に不眠で苦しんでいるのだから、まあまあな訳がない。
もう自分の中では吹っ切っているはずなのに、夜になると眠れなくなるのだ。
いまでも2人の微笑ましい姿を見るのは確かに辛い。だからといって、嫉妬に駈られるような思いはもうないはずなのに。
里菜の言うように新しい恋に一歩踏み出せば違ってくるのだろうか。
すでに宴も終盤に差し掛かり、ここにいるメンバーから1人ずつ2人へのお祝いの言葉を話し始めてる。
とても今はそんな気分じゃないのに抜け出す事も許されない状況で、大智が心配そうに私を伺ってるのが分かり余計に辛くなった。
そして回ってきた私の順番。
「草太、佳澄。結婚おめでとう。草太は子供が大好きな人だからきっといい父親になってくれると思うし、佳澄は気が利く人だから素敵な母親になれると思う。末長くお幸せに」
なんて仕打ち。裏切られた元彼と奪い去った女の幸せを願うようなコメントをしなければならないなんて、神様はどS級の意地悪だ。
私がお祝いの言葉を言った後も、あちこちでコソコソと耳打ちする姿が目に入る。
きっと捨てられた女の事を面白おかしく話してるのだろう。それを振り切るように私は飲むペースを早めた。