失恋のその先に
「すみません。相沢は俺が送って行きますのでお誘いはお断りします」
「参ったな。僕は相沢さんに聞いてるんだけど」
断ろうとしていた私の目の前で、相沢さんと大智が牽制しあってる。ふと視線を感じて横を見れば、草太がジッと私を見つめていた。
まるで何かを言いたげに瞳が揺れている。その状況に耐えられず私は1人の男性の腕を取り歩き出した。
「工藤さん。どこか素敵なお店連れて行って下さい」
「了解」
後方では外野がかなり騒がしかったが、無視してずんずんと先へ進んだ。
彼が連れて来てくれた店は、雑居ビルの地下にあるこじんまりとしたバーだ。
マスターらしき人も私と変わらないような年齢で、中は若干薄暗く、所々にランプがあり辺りをぼんやりと照らしている。
工藤さんに促されるまま私達はカウンターに並んで座った。
「まさか相沢さんが誘いに乗ってくれるとは思わなかったよ」
「私の方こそ強引に引っ張り出してしまって…すみません」
自ら誘いに乗っはたはずなのに、今はすでに後悔している。それはこの店に入ってから工藤さんの雰囲気がなんとなく変わったからだ。
電話や商談の時しか会話したことのない人とこんな場所に来てしまったのはやはり迂闊だったかも。