Fake love(1)~社長とヒミツの結婚契約書~
私は怜に診察結果のメールを打つ。


私の妊娠に怜はどのような反応を示すだろうか?



メールを打つ指が震えた。



私が駅に向かって歩いていると怜からメールではなく電話が掛かって来た。



「怜…私…」



―――――――昨日は悪かった。おめでとう…今日から君の身体は、一人だけのモノじゃない。俺の子供の命も預かっているから、大切にしてくれ



「わかってるよ」



怜が私の身体を労わるのは子供の為。私のコトなんて微塵も心配していない。心に絶望感が漂い始める。



――――――俺は今から会議だから切るよ



「うん」



怜の方が先に通話を切った。



私はスマホをギュッと握り締めた。

液晶画面に落ちた雫。



それは私の涙だった。最初から、怜の目的は私に子を産ませるコトだと理解していたのに。



頭ではそう刷り込んでいたが、心は怜に強く惹かれた。怜の嘘の愛の囁きに鼓動を跳ね上げ、彼に全てを委ねた。


瀬川さんの言葉を信じ、怜に寄り添ったが、彼自身の愛は嘘でしかなかった。









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