Fake love(1)~社長とヒミツの結婚契約書~
「男が父親の自覚を持つよりも、女が母親としての自覚に目覚める方が早い…」



「そう言うモノなのか?」


「あぁ~円もそうだったから…まず、悪阻が食べ物の嗜好を変化させる。そして、胎動…日に日に大きくなるお腹」


俺の脳裏にはお腹の大きい紗月の姿が浮かぶ。



「父親だけで子供は育てられると思うか?」



「そんなの無理だよ。父親には仕事があるし、母乳は出ないだろ?」



「粉ミルクがあるだろ?」


「赤ちゃんと母親の絆は赤ちゃんと父親の絆よりも深い…」



「・・・」


俺は目の前の懐石に箸を伸ばした。


赤ちゃんは十月十日…紗月の胎内で育まれる。


俺の子であっても、母親の紗月の方が赤ちゃんとの関係は深い。

俺はその深い関係を引き裂こうとしているのか?


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