Fake love(1)~社長とヒミツの結婚契約書~
私は東亜医科大付属病院産婦人科で検診を受けていた。


「円さん?」


「…あら?紗月さんも検診?」


「はい、5ヵ月検診です」


「へぇー」


待ち合いのソファに円さんが座っていた。
私は円さんの隣に腰を下ろす。


「円さんも診察ですか?」


「デキたかもしれないのよ…」


「私と同じおめでたですか?」


「そうなるかも…紗月さんは予定日いつだっけ?」


「予定日は確か…7月7日です」


「7月か…」


「おいっ!?円。まだか?」



円さんのそばに眼鏡を掛けた男性が近寄って来る。

しきりに眼鏡を弄り、恥かしそうに俯いていた。


「…今日は混んでるみたいよ。敦司」


「来るんじゃなかった…」


「何言ってんの!?どうせヒマなクセに…」


「私はヒマではない…」

男性はバリトンの声で響かせて、口惜しく弁解する。


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