Fake love(1)~社長とヒミツの結婚契約書~
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でも、私と怜の赤ちゃんはいつまで経っても元気な産声を上げない。
純粋な感激の涙に不安なキモチが入り混じり始める。
生まれたら、赤ちゃんは自力で呼吸を始め、その前駆として肺にめいっぱい空気を吸い込んで、声を上げるはず。
「赤ちゃんが泣かない…大丈夫ですか??」
「今、槇村先生が必死に処置していますから…安心して」
助産婦の林さんが私に説明してくれた。
処置って…
私の意識も朦朧をし始める。
ようやく、槇村先生が自ら赤ちゃんを抱っこして私に見せてくれた。
――――――私と怜の赤ちゃん・・・
産み月までお腹の中に居なかった赤ちゃんは小さかった。
私のお腹の中で元気な胎動を感じさせていたのは嘘のようだ。
触れた指先は冷たく、死人のよう。
「大丈夫、心臓は動いているから…」
槇村先生は看護師に赤ちゃんを渡し、急いで私の処置にあたった。
「ヘパリン…輸血の準備だ…」
私はそのまま朦朧していた意識を手放してしまった。