Fake love(1)~社長とヒミツの結婚契約書~
私は瀬川を映画に誘った。


二人で渋谷の街に繰り出す。


スクランブル交差点。


ハチ公像。


ファッションの聖地・『106』


「楽しそうですね…」


「一度行ってみたかったのよ。お婆様はこのような下賤な人間の行くいかがわしい場所に足を運ぶ必要はないと言うけど…そもそも、人は平等でしょ?お嬢様の私が来てもいいわよね」


「…ええ。また行きたいと時は俺にお申し付け下されば、案内致しますよ。紗耶香お嬢様」


「ありがとう…瀬川。ねぇ?瀬川…人が多いし、はぐれて迷子になると困るから、手を繋いで?」


「お嬢様と俺が手を繋ぐ?」


瀬川は神妙な表情を浮かべる。



「ダメならいい…迷子になった時は絶対に見つけてね」


瀬川はバックからハンカチを取り出し、ウエットティッシュで手を拭き始める。


「お手をどうぞ。紗耶香お嬢様」


瀬川は綺麗にした手をそっと差し出した。








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