竜の瞳と世界の秘密
*第1章*始まりの追憶
…ここはどこだろう?
からだはふわりふわりと浮きながら、一面がコバルトブルーに彩られた世界を縦横無尽に進んでゆく。
とても綺麗だけれど、どこかもの寂しい場所だった。
海よりも静かで、どんなブルーにも負けないくらい強く輝きながら、それでいて優しい色だ。
流れに身を任せながら進むと、微かに音のようなものが聞こえてきた。
そのまま更に進むと、今度は人の形をしたものと、大きなブルーの山のような塊が見えた。どうやら微かに聞こえた音は、話し声だったらしい。
「お主は本当にそれでよいのじゃな?」
「うん、ぼくに出来ることはすべてやったつもりだからね」
少しずつ見え始めた視界に見えるのは、驚くべきことに、ブルーの塊だと思った竜と、一人の少年だった。
竜がこの世界に実在するなど、知っている人はほんの一握りもいないほど、伝説化された生き物だった。
唖然としながら見つめていると、彼らの会話が聞こえてきた。
「妾には、お主がまだこの世界に未練があるようにしか見えないのじゃが」
低く、脳裏に直接響いてくる声だ。
「…そうだね、未練がないと言えばウソになる。でも、ぼくは、ぼく自身が愛したこの世界を終わらせたくないんだ」
どこか懐かしいその声の訴えは切実で、とても強い意識の宿った瞳をしていた。
「そう言われてものう。お主が今すぐこのことを望んでいたとしても、どのみち時間は足りないのじゃぞ?」
「それについては大丈夫。ぼくが、あらかじめ準備をしておいたからね。それに、例えぼくのヴァルトだけでは足りないとしても、優しいきみなら助けてくれるだろう?」
そう得意げにこたえる少年とは裏腹に、竜の顔は渋くなっていた。
「お主、最初から妾の親切心につけ込んでおったな?だがな、肝心の当人がいなければ、進めることもできないのじゃぞ」
少年は、まってましたとばかりにニヤリと笑うと、こちらを見上げてぶんぶんと手を振ってきた。
「おーい、そこに浮いてるキミ!ちょっとこっちに来てくれるー?」
急に自分が呼ばれたので、驚いて彼らを見つめると、弾かれたように竜が頭を上げ、こちらを凝視してきた。
「お前さんは、まさか…」
大きな目を見開き、呆然としたようにつぶやいた。
「そう、そのまさかだよ。彼女はぼくが喚んだんだ。禁忌の方法でね。ーキミ、逃げなくていいから、こっちにおいでってば」
驚いて逃げようとしていたところに声をかけられたのて、びくりとして後ろを振り返った。
見れば、おいでおいでと笑いながら手んを振る少年と、目を見開いたまま固まっている竜の姿が見る。
バレてしまえば仕方がないので、思いきって少年と竜からほんの2、3m離れたところに降りたった。
「はじめまして、って言うのもヘンな感じだなぁ」
少年は、こちらの顔をじっと見つめると、楽しそうに手を取った。
…今気付いたことなのだが、この少年と自分の顔が似ている。いや、正しく言うと、自分の顔は思い出せないどころか知らないのに、自分の直感が彼と存在そのものが同じだと伝えていた。
驚いて目をまるくする自分に、少年は微笑んで話はじめた。
「今から話す内容は、とても信じられないものだと思う。でもどうか、落ち着いて聞いてほしい。関係ないキミを巻き込んでしまうのは、とても心苦しいけれど、ぼくの大切な世界を守るためには、どうしてもキミが必要だったんだ。だから、今すぐに信じなくてもいい。ぼくの、昔話を聞いていてくれれば」
そう言って彼は、彼自身におきた昔の話をしてくれた。
それは、とても悲しく、世界の秘密へと繋がる鍵ともなるのであった。
からだはふわりふわりと浮きながら、一面がコバルトブルーに彩られた世界を縦横無尽に進んでゆく。
とても綺麗だけれど、どこかもの寂しい場所だった。
海よりも静かで、どんなブルーにも負けないくらい強く輝きながら、それでいて優しい色だ。
流れに身を任せながら進むと、微かに音のようなものが聞こえてきた。
そのまま更に進むと、今度は人の形をしたものと、大きなブルーの山のような塊が見えた。どうやら微かに聞こえた音は、話し声だったらしい。
「お主は本当にそれでよいのじゃな?」
「うん、ぼくに出来ることはすべてやったつもりだからね」
少しずつ見え始めた視界に見えるのは、驚くべきことに、ブルーの塊だと思った竜と、一人の少年だった。
竜がこの世界に実在するなど、知っている人はほんの一握りもいないほど、伝説化された生き物だった。
唖然としながら見つめていると、彼らの会話が聞こえてきた。
「妾には、お主がまだこの世界に未練があるようにしか見えないのじゃが」
低く、脳裏に直接響いてくる声だ。
「…そうだね、未練がないと言えばウソになる。でも、ぼくは、ぼく自身が愛したこの世界を終わらせたくないんだ」
どこか懐かしいその声の訴えは切実で、とても強い意識の宿った瞳をしていた。
「そう言われてものう。お主が今すぐこのことを望んでいたとしても、どのみち時間は足りないのじゃぞ?」
「それについては大丈夫。ぼくが、あらかじめ準備をしておいたからね。それに、例えぼくのヴァルトだけでは足りないとしても、優しいきみなら助けてくれるだろう?」
そう得意げにこたえる少年とは裏腹に、竜の顔は渋くなっていた。
「お主、最初から妾の親切心につけ込んでおったな?だがな、肝心の当人がいなければ、進めることもできないのじゃぞ」
少年は、まってましたとばかりにニヤリと笑うと、こちらを見上げてぶんぶんと手を振ってきた。
「おーい、そこに浮いてるキミ!ちょっとこっちに来てくれるー?」
急に自分が呼ばれたので、驚いて彼らを見つめると、弾かれたように竜が頭を上げ、こちらを凝視してきた。
「お前さんは、まさか…」
大きな目を見開き、呆然としたようにつぶやいた。
「そう、そのまさかだよ。彼女はぼくが喚んだんだ。禁忌の方法でね。ーキミ、逃げなくていいから、こっちにおいでってば」
驚いて逃げようとしていたところに声をかけられたのて、びくりとして後ろを振り返った。
見れば、おいでおいでと笑いながら手んを振る少年と、目を見開いたまま固まっている竜の姿が見る。
バレてしまえば仕方がないので、思いきって少年と竜からほんの2、3m離れたところに降りたった。
「はじめまして、って言うのもヘンな感じだなぁ」
少年は、こちらの顔をじっと見つめると、楽しそうに手を取った。
…今気付いたことなのだが、この少年と自分の顔が似ている。いや、正しく言うと、自分の顔は思い出せないどころか知らないのに、自分の直感が彼と存在そのものが同じだと伝えていた。
驚いて目をまるくする自分に、少年は微笑んで話はじめた。
「今から話す内容は、とても信じられないものだと思う。でもどうか、落ち着いて聞いてほしい。関係ないキミを巻き込んでしまうのは、とても心苦しいけれど、ぼくの大切な世界を守るためには、どうしてもキミが必要だったんだ。だから、今すぐに信じなくてもいい。ぼくの、昔話を聞いていてくれれば」
そう言って彼は、彼自身におきた昔の話をしてくれた。
それは、とても悲しく、世界の秘密へと繋がる鍵ともなるのであった。