キミと帰る道
*
無造作にセットされたふわふわした自然な黒髪。
細身な体型に高い身長。
…その後ろ姿は……。
「…っ、藤谷くん!」
きっと、藤谷くんだよね?
ううん、藤谷くんだ。
前にいる藤谷くんの足がゆっくりと止まって。
振り返った藤谷くんは相変わらずの無表情だった。
藤谷くんのところまで小走りで行くと、藤谷くんは不思議そうな顔でじーっと私を見つめてくる。
「……誰?」
「…へ?」
藤谷くんの口が紡いだ言葉に私は首を傾げる。
『誰?』って…、お昼休みに話したばっかじゃん。
「日本史の教科書、お昼休みに借りて…」
「無くしたと思ったら、あんたが勝手に持って行ったわけ?」
「え? ち…違うよ?」
おかしいな……。
目の前にいるのは本当に藤谷くんなのか疑いそうになる。