キミと帰る道
「わ…私のことを?」
「それだけだけど。
がんばって……思い出した。
だって、すずのことを思い出したかったから」
「藤谷く…っ…」
もう、嬉しすぎるよ。
少しだけでも…覚えてくれて。
だって、失顔症には治療法はないってかいてあって。
がんばって特徴を掴んで覚えることしか、方法はなかったから。
ちゃんと覚えてはなくても…嬉しすぎるよ。
「き、今日…一緒に帰ろう…?」
勇気を出して。
いままで藤谷くんに言ってた言葉を口に出す。
藤谷くんは『うん』とは言わずに、柔らかそうな髪の毛をくしゃっとさせた。
「今日は日直なんだ。
終わるの遅くなるのかもしんねーし。
それに、俺の隣の席のやつに病気のことを言ったら。
放課後、クラスのやつのひとりひとりの特徴とかを教えてくれるって言われて」
藤谷くんは申し訳なさそうに笑った。
「だから、さ。
……明日は一緒に帰らねぇ?」
私はその言葉に、何回もコクコクと頷く。