キミと帰る道
不意に左手が温かいなにかに包まれて。
「……っ、すず!」
そう、名前が呼ばれたかと思うと。
ぐんっと腕が引っ張られて。
———気がついたら、地面に座り込んでいた。
目を開くと、焦った顔の藤谷くんが私の顔を覗き込んでいて。
藤谷くんの右手と私の左手は繋がっていた。
「危ねぇじゃんっ。
なに、ぼーっと歩いてんだよ…!?」
「あ…っ、ごめん…」
轢かれずに済んだんだ。
藤谷くんがいなかったら、私……。
そう思うと本当に恐ろしいよ。
なんでだろう。
ものすごく怖かったから、胸がドキドキするの?
それとも、温かい手に優しく包まれてるから?
それとも、…助けてくれた藤谷くんに?
『ありがとう』って言わなきゃ。
だけど、口は違う言葉を紡ごうとしている。
「藤谷、くんっ…!」
ここで言ったらお終いなのに。
私は『ありがとう』と言いたいのに。
気がついたら口は違う言葉を紡いでいた。