キミと帰る道
「でも光輝は…」
聖羅ちゃんはそこで口を閉じた。
……藤谷くんは?
そのあとが知りたいのに、聞けない。
「ごめん。 でもきっと光輝もすずちゃんのこと好きになるよ…!」
「もういいの!!
私は、諦めたから」
好きな人には幸せになって欲しい。
…そう、決めたもん。
だからもう諦めるんだ。
藤谷くんの好きな人は聖羅ちゃんだから。
聖羅ちゃんにもちゃんと気づいて欲しいな。
「すず…、いいの…?」
「なにが?」
優芽ちゃんは悲しそうな顔で私の目をじーっと見つめてくる。
「諦めちゃうの?」
本当はそんな簡単に諦められる恋じゃないけど。
だってもう、振り向いてなんて望んでないから。
そんな無謀なこと…考えてないから。
「ん、いいの」
「…じゃあ! あたし、光輝にアタックするよ? いいの!?」
私の机にバンッと両手を置いて。
必死な顔でそう言った聖羅ちゃん。
「がんばってね」
私が笑ってそう言うと。
聖羅ちゃんは勢いを無くして、『うん』と小さな声で、俯いて返事をした。