キミと帰る道





(光輝)





どんよりと曇った空を、低いフェンスに頬杖をつきながら見上げる。





……追いかければよかった。





それは、2度目の後悔で。
俺はため息を吐いてフェンスに寄りかかって。
そのまま、地面に腰を下ろした。





「……なにがしたいんだよ…」





すずのことを考えると、自分で自分がわからなくなる。
すずをたくさん傷つけてる自分が、情けなくなる。





…それは、聖羅も。
聖羅だって…傷つけてんだよな、俺。





またため息を吐いて、地面を見つめていた視線を、また空に向けた。





バンッ———。





「光輝ッ!」





そんなとき、ちょうど目の前にあるドアが勢いよく開いて。
ものすごい形相の聖羅がズカズカと歩きながら俺の前に来た。





「……聖羅?」




「光輝はなんのためにすずちゃんのことを覚えたの!?」




「…は? なに急に…」




「いいから!」




「…それは、人のことを覚えられるようにするための、練習…?」





そのはずだった。
すずを覚えられたら、俺は人のことを覚えられるようになるんじゃないかって…。




< 142 / 228 >

この作品をシェア

pagetop