キミと帰る道
他愛の話をしながら歩いていると。
目の前に見覚えのある背中がふたつ見えた。
黒髪のふわっとした柔らかそうな髪の毛で、運動してないからか少し華奢な背中をした男の子と。
同じようにふわっとした柔らかそうな茶色の髪の毛で、モデルさんみたいなスラーッとした立ち姿の女の子。
たくさんの人がいる中で。
ふたりが私の中でピックアップされた。
「聖羅ちゃんと藤谷くんだ」
ほら、キラキラしてる。
なんだか、幸せそうなふたりに少し嬉しくもなる。
「ふたりでデートだったんだね!」
「すず、移動する?」
そんな優芽ちゃんの言葉に、ふたりの背中を見ていた視線を優芽ちゃんに移した。
「……どうして?」
「だって……」
「もう、優芽ちゃんってば! お昼にも言ったじゃん。
私は聖羅ちゃんのことは憎んでない。
ふたりが結ばれて、寧ろ嬉しい。
私はこの恋を終わりにするの」
力強く、気持ちを込めてそう言うと。
優芽ちゃんは心配そうな顔をしていたのに。
気がついたら、穏やかに笑っていた。