キミと帰る道
———ジリリリリリッ!
手探りで目覚まし時計を止めて。
眠たい目を擦りながらむくっと起き上がる。
…夢に出てきたのは誰だ?
なんか、モヤモヤする。
思い出そうとすると、モヤがかかったように、その人の顔がよく見えない。
まあ、いつものことだし…いいか。
さほど気にせず、制服に着替えてリビングに向かう。
するとキッチンに立っていた母さんが、ひょこっと俺の顔を見に出てきた。
「おはよう、光輝」
「……はよ」
優しく穏やかに笑う母さん。
静かな静かなリビングに、料理を作る音が聞こえる。
テレビはあるけど、俺がいる前でつけない。
ドラマを見ても少しずつ筋道がわからなくなるし。
1週間後には誰がどんな役だったかも思い出せなくなる。
芸能人も初めて見るやつばかりだし…。
だからある日、俺が『見たくない』と言ってから、テレビはつけなくなったんだ。