キミと帰る道
「俺の頭に聖羅もいて。
俺はいつも一緒にいてくれた聖羅を裏切りたくなくて、断ったんだ」
「……っ」
「きっと、もうすずは俺のことなんてどうでもいいって思ってんだろうけど。
俺はちゃんと…自分の気持ちに正直になりたかったんだよ。
いきなり、ごめんな…?」
嬉しいはずなのに。
だって、淡くて儚くてもまだ恋心はあったから。
…だけど。
どうしてか、ちょっぴり悲しくなるよ。
藤谷くんは立ち止まる私をただじーっと見つめてきて。
私はゆっくりと地面に視線を逸らした。
「忘れて?
ほら、帰ろう」
またチラッと藤谷くんを見ると。
藤谷くんは柔らかい笑顔の中に悲しみを見せていた。
私はなにも言わずに、藤谷くんの隣まで歩いて行く。
……まだ困惑してるけど。
でも、私もまだ好きだから。
伝えてもいいかな?
…ううん、伝えなきゃきっと…後悔するよね。
どうしてあのとき、ちゃんと自分の気持ちに正直にならなかったんだろうって。
———それだけは、嫌だ。