キミと帰る道
藤谷くんがゆっくりと歩き始めて。
私も藤谷くんを追いかけるように歩く。
「『一緒に帰ろう』って言ってくれて…嬉しかった」
自分でも驚くくらい小さな声でそう言った。
「そっか。 それなら良かった」
「…告白してくれて、嬉しかった」
「……うん」
言わなきゃ。
…私のこの気持ちを。
ちゃんと、言葉にしなきゃ。
伝わらない。
私はまた立ち止まって。
ぎゅうっと両手を握りしめる。
そんな私に気づいたのか、藤谷くんは不思議そうに振り返った。
目が合ったけど、私は地面へと視線を逸らす。
「…………っ、好き!!」
振り絞った声は思ったよりも大きくて。
私たちの横を通り過ぎる、犬の散歩をしていたおばさんがチラッと見てくる。
それに、犬もワンワン吠えてくる。
…声、大きすぎた……よね。
恥ずかしい…。
で、でも…これが私の気持ちだから。
忘れようと決めてても忘れられなかった気持ち。
「すず、顔あげて?」
藤谷くんが私に近づいてくる足音が聞こえてくる。
顔をあげたいけど、あげられない。