キミと帰る道
「なー母さん」
「ん? どうしたのよ?」
イスに座りながら、朝ごはんを作る母さんに話しかける。
「俺さー…人の顔がよく覚えられねぇんだけど」
「あら…それ、前にも言ってたわよね?
病院で診てもらったほうがいいんじゃないかしら?」
……いや、病院は嫌いだ。
だから行きたくないし。
それに、そんな重い話でもないだろ、きっと。
「やっぱり大丈夫。
そこまででもねーし…」
「それならいいけど…」
テレビの横にある棚に飾ってある、笑顔の小さな女の子。
…これ以上、母さんと父さんには迷惑かけたくねーよ。