キミと帰る道
たくさん積み重なる、角材。
目の前に藤谷くんがいないってことは…もしかして…。
考えたくないのに。
残酷なことを考えてしまう。
「…うっ…、藤谷く…っ」
泣いたって無駄なのに。
ぽろぽろと涙が零れる。
どんどん視界に野次馬が増えていく。
私も立ち上がって藤谷くんの元に行きたいのに、尻もちをついた上に腰が抜けて、立つことができない。
「キミ、大丈夫?!」
頭にタオルを巻いた、鳶職のおじさんが私に向けて右手を差し伸べてくれた。
「藤谷くんが…っ」
右手を借りて立ち上がることができると、私は人を掻き分けて角材の山の目の前に立った。
角材の隙間から…赤黒い血が見える。
「…藤谷くん…?!」
怖くて藤谷くんの姿は見たくないけど。
助けたくて……。
ねえ、どうして…こんなにも幸せな気持ちになったあとに、不幸なことが起きるの?
神様は残酷だよ……。
一本一本の角材をどかしていく私を、野次馬の人たちは止めることもなく、ただ見てくる。