キミと帰る道
「…忘れちゃう理由、わからないの?」
「…あぁ」
「病院には?」
「親には迷惑かけたくねぇから、行かねーよ。
それに…そんなひどくないし」
十分、ひどいじゃん。
病気じゃないの?
診てもらったほうがいいと思うのに。
だって…昨日話した私のことを忘れちゃってるんだから。
これじゃあ、いつになっても覚えてくれないじゃん。
どうすればいいのかな…。
ついため息を吐きながら、しゃがみ込む。
チリーン———。
え? 音が鳴った場所を見ると、それはポケットに入っていたはずの、私の家の鍵が落ちた音だった。
鈴…の音。
———そうだ!