キミと帰る道
「藤谷くん、いまスマホ持ってる?」
「……ん、あるけど」
「貸して!」
藤谷くんは不思議そうな顔で、ポケットから出したスマホを私の手の上に置いた。
私は家の鍵から鈴のキーホルダーを外して、代わりに藤谷くんのスマホにつける。
「……え?」
「〝すず〟だから、鈴をつけたの!
これつけたら…覚えてもらえるかと思って。
たぶん、うるさいだろうから。
迷惑だったら…外してね!」
少しでも覚えて欲しい。
私のことを忘れちゃダメってことじゃなくて。
藤谷くんが私にこんな調子なんだから、きっと他の人にもこうなんだろうな。
だから、それが治るように…小さくても一歩進められればいいから。