キミと帰る道
*
正門を出て、少しずつ人が減ってきた。
私は少し足を早めながら。
藤谷くんにゆっくりと近づいて行く。
「ふ…藤谷、くん!」
声を振り絞って、藤谷くんの背中に向けて話しかける。
…自己紹介、しなきゃ。
また〝初めまして〟からなんだ。
「……なに?」
初めての人に向ける、いつも通りの冷たい視線。
少し仲良くなると、少しだけ柔らかい表情にもなるのにな。
「朝、サボったでしょ?
そのときに私も屋上でサボったんだよ」
「え? ……あー…」
なにかを思い出すように、右手で黒い髪を掻いた。
「………そう言えば、誰かと話した…かも」
「私だよっ。
逢原すず! スマホに鈴のキーホルダーつけたでしょ?」
「……逢原、か」
「うん!
約束したんだよ?
『一緒に帰ろう』って…!」