キミと帰る道
「あ。 その人に借りれば?」
諦めかけたとき。
優芽ちゃんが指を差したほうに視線を移すと。
指はあみちゃんの後ろの席の机の上を差していた。
き…救世主!
だけどそこの席の人はいない。
「んー? あ、藤谷くん?
それなら、ほら戻って来たよ」
あみちゃんは教室の後ろのドアを見た。
え? ふ…藤谷くんって、あの〝観賞用の王子様〟の藤谷光輝(こうき)くん⁉︎
そ…そんな、恐れ多い…。
「ねえ、藤谷くん」
「…なに?」
そんな私は関係ないと言うかのように、優芽ちゃんが席に座った藤谷くんに話しかけた。
か…かっこいい…!
「ほら、すず。
自分で頼みなよ」
え?藤谷くんと話せと…?
で、でももう仕方ない!
日本史の先生は忘れ物をするとすごく怒るし…。