嫌われ者に恋をしました

 雪菜が席に戻ると、綾香がさっそく話しかけてきた。

「どうだった?大丈夫そう?」

「はい、問題ありませんが」

「いやいや、監査もそうだけどさ、松田課長。何考えてんのかわかんないじゃない?あの人」

「それはそうですが……」

「みんな監査も嫌だけど、松田課長の雰囲気がダメなのよ。なんか冷たいっていうか、威圧感あるって言うか。あの人と上司一人部下一人で仕事すんのよ?なんか、真っ暗じゃない?」

「そうでしょうか?」

 雪菜が首を傾げると綾香は呆れた顔をした。

「まあ、小泉さんは……大丈夫かもね。ちょっと似てるもんね、クールな感じで」

「はあ……」

 確かに、松田課長はクールな印象だった。去年、一緒に監査に行った時も特にお喋りをするわけでもなく、冗談の一つも言わず、淡々と仕事をしていた。

 でも、人と係わることが苦手な私としては、いろいろ余計なことを話しかけられるより、あのくらい静かな方がいい。

 私も淡々と仕事をこなそう。

 このまま、目立たず静かに淡々と。
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