嫌われ者に恋をしました
そのままの勢いで、雪菜は続けた。
「課長、本当は瀬川さんから聞いていたんですね?私のこと」
隼人は眉間に皺をよせて首を傾げた。
「聞いてないよ」
「じゃあ、何で知ってたんですか?本当は瀬川さんから聞いていたんでしょう?ずっと前から私のこと、都合の良い女だって、話してたんでしょう?」
「そんなこと話してない」
「そんなの嘘!」
「嘘じゃない」
隼人は雪菜から目をそらして斜め下を見てから、もう一度雪菜を見つめた。
「雪の中で電話してるのをたまたま見かけたんだ。瀬川に聞いたわけじゃない」
それは……きっとあの時だ。誕生日に来てほしくて来れないって言われたあの雪の日。じゃあ、泣いていたのも見られてたんだ……。
そうだったんだ……。それなのに今、自分のことを都合のいい女、なんて言ってしまった。完全に自滅。もうなにもかもイヤだ……。
「小泉。さっき、『嫌』って聞こえたよ……。嫌なことを嫌って言ったんだよな?偉かったじゃん」
そう言って隼人は雪菜の頭をそっと撫でた。その仕草は雪菜の心に優しく触れて、何かが報われたような気がした。瀬川のことも自滅したことも、全てとけて消えていく感覚に、思わず目を閉じた。
「ごめん、嫌だった?」
隼人はスッと手を離したから、雪菜は寂しくなって首を振った。それを見た隼人は、雪菜にもう一歩近づいた。