嫌われ者に恋をしました

 柔らかさを確認するように触れては離れ、角度を変えて何度も唇が重なった。

 少しずつ動きが大胆になってきて、食むように唇をとられ、なぞるように舌が這ったから、雪菜は思わず少し口を開けてしまった。その途端に滑らかに入ってきた舌は優しく雪菜の舌を絡め取ろうとする。

 久しぶりに感じる強い煙草の味。でも、不思議と不快には感じなかった。

「……んっ」

 思わず声が漏れてしまい、逃げ腰になって頭を動かそうとしたら、いつの間にか頭の後ろに回った手に固定されていて、動かせなかった。体も強く抱き締められて身動きが取れない。

 逃げられないまま、漏れる吐息と舌の重なる感触に溺れていく自分を感じる。強く抱き締める腕の感触に全身が粟立つ感触を感じる。隼人に触れている喜びをもっと感じたくて、雪菜は隼人の背中に手を回した。

 身動きをするたびに耳に届くスーツの擦れる音が、いけないことをしているような気持ちにさせて、ますます唇の柔らかい感触に夢中になった。

 背広を掴んでいた雪菜の手から力が抜けて下に落ちた頃、ようやく隼人は唇を離した。そして、虚ろな瞳をした雪菜を見つめると、胸の中に抱き締めた。
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