嫌われ者に恋をしました
温かい。嬉しい。人の温もりを感じる。
気がついたら夕暮れを過ぎて、部屋の中は薄暗くなっていた。いつまでも抱き合っているわけにもいかず、二人はそっと離れた。
隼人から離れた途端、雪菜は体に冷たい空気が流れ込んでくるのを感じて、スッと背筋に寒気が走った。あの恐怖を一瞬でも忘れていたなんて。
また温もりを知ってしまった。あの唇の感触を知ってしまった。でも、この人も瀬川さんと同じように、いつかは離れていく日が来るのではないか。また一人きりにされる、という恐怖が突然膨れ上がってきて、怖くて涙があふれてきた。
雪菜が急に大粒の涙を流し始めたから、隼人は驚いた。
「どうした?どうしたんだよ」
隼人は雪菜の肩を掴んで軽く揺すった。雪菜は涙に詰まってなかなか声が出なかったが、やっと絞り出すように言った。
「……捨てないで……、一人にしないで……」
隼人は一瞬目を大きく開いて茫然としたが、抱き寄せて思いっきり抱き締めた。
「そんなことしない。絶対にしない。捨てるなんてあり得ない。絶対にあんな風に泣かせたりしないから」
あの雪の日のことを言ってるんだと思った。
「……それでも不安?信用できない?」
涙が止まらない雪菜を隼人は少し寂しげに見つめた。雪菜も口ばかりだった瀬川と隼人が違うことはわかっていた。でも、不安を消すことはできず、何も答えられなかった。
「信じられないなら、何かに誓おうか?」
「?」