嫌われ者に恋をしました

「……また吸ったら、信じません」

 唐突にそんな発言をしてしまって、雪菜は自分でも驚いた。そんなことを言われて隼人がどんな反応をするのか怖かったが、そんな心配をよそに隼人は微笑んで言った。

「わかってるよ、そのために誓ったんだから」

 本気なのかな?信じてもいいのかな?こんな風に誓ってくれるなんて、本当はそれだけでも嬉しい。

 人と関わることが怖かったのに、課長との関係がどんどん進んでいく。

 また、一人ではない温もりを思い出した。また、一人きりに戻る恐怖を思い出した。

 課長の腕の中はとても温かい。抱き締められて包まれる感触はたまらなく幸せ。私を信じさせようと私のお願いまで聞いてくれた。

 約束してくれたけど、本当だろうか。

 これで裏切られたら、立ち直れない。

 でも、いつまでもジメジメウツウツしていたって、仕方がないのかもしれない。

 課長は私を好きだと言ってくれた。そばにいてほしいと言ってくれた。

 裏切られるかもしれないという恐怖は、喉元に添えられたナイフのようにいつも私と共にあるけれど、それは課長が信用に値しないのではなく、私自身の問題なのかもしれない。

 そういえば……、私も好きって言ってない。

 雪菜はじっと隼人を見つめた。見つめたら恥ずかしくなってますます言えなくなった。

「どうしたの?」

 雪菜は何も言えず、首を振って隼人の胸に顔を押し付けた。隼人は覗き込むように少し首を傾げたが、何も言わず雪菜を抱き締めてそっと髪を撫でた。
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