嫌われ者に恋をしました
途中になっていた資料整理を二人で終わらせた後、食事をして隼人は雪菜を家まで送った。
帰り道、思い切って隼人が手を繋ぐと、雪菜はおろおろして見上げた。
「誰かに見られたら、……困りませんか?」
「困らないよ。見られたら、その時はその時」
「でも……」
確かに会社の人間に見られたら、異動になって一緒に仕事はできなくなってしまうだろう。バレないに越したことはない。でも、こそこそしたくはない。
「もちろん、会社ではこんなことしないよ」
「あ、当たり前です!」
雪菜は赤くなって困った顔をした。
俺のバカなセリフに真面目に答えるなんて。まだ少し表情は硬いものの、困った顔もかわいい。
顔を赤くしてうつむく雪菜がかわいくて、見下ろしながら隼人は手をギュッと握ってみた。すると雪菜もうつむいたまま軽く握り返してきた。
こっちを見てくれないのは残念だが、こんな風に反応を返してくるなんて、昨日までは考えられなかった。指先に触れるのでやっとだったのに。
「休みの間、どこかで会えない?」
休みの間、一日でもいいから外で会ってみたいと思っていたことを思い出して、隼人は切り出した。