嫌われ者に恋をしました
「え?あ、はい。……大丈夫です」
「いつがいい?予定とか、あるだろ?」
「えっと、いえ。特には」
「どこにも行かないんだ?家でやりたいこととかは?」
「それは、そうですね。掃除とか……」
それは予定とは言わないだろう。それは夏休みじゃなくてもできる家事だ。
「じゃあ、明後日はどう?」
「はい。大丈夫です」
「じゃあ明後日にしよう。どこか行きたい所、ある?」
「え?行きたい所?」
そう言うと雪菜は固まってしまった。
「うん、雪菜が行きたい所に行こう」
隼人はそう言ったものの、瀬川と出かけたことでも思い出したのだろうかと、また女々しいことを考えていた。
「特に……、思い浮かばないです」
「どこでもいいんだ。すごく特殊な場所じゃなければ、どこでも連れていくよ?」
「……じゃあ、考えておきます」
「うん」
そんなに考えることだろうか。もしかして、瀬川とは行ったことのない場所、なんて考えているんだろうか。それとも、行き先なんて男が考えるもの、とか?
鬱々とそんなことを考えていたら、あっという間に雪菜の家の前まで着いてしまった。