嫌われ者に恋をしました
「野球ですか?今のイメージと違いますね」
『だろうね』
「野球部の時の写真、見てみたいです」
『絶対ダメ』
「どうしてですか?」
『どうしてもだよ!雪菜は高校の時、何をしてた?』
「私は何も」
『帰宅部ってやつだ』
「そうですね」
『じゃあ、帰宅部の写真を見てみたい』
「……写真はありません」
『そんなわけないだろ?見せたくないからって嘘はダメだよ』
「嘘じゃありません。本当にないんです。……卒業アルバムはあったかも」
『ふーん……、じゃあそれ見たい』
「……それは、野球部員と交換です」
『うーん、仕方ないね。交渉成立』
卒業アルバムなんて、どこにしまっただろう。そう思って押し入れを眺めながら、こんなに自然に話せている自分に驚いていた。
ミノリちゃんと話す時とはまた違う高揚感。
私、気負わないですんなり話せているけど、今話しているこの人は私の彼……なんだ。そう思った途端、電話の向こうの声がくすぐったく感じた。
最初は怖そうだと思っていたけど、本当は優しくて、時々怒ってしまって、守ってくれる頼もしい上司で。最初あんな言い合いをしてしまったのに、今日はキスをして抱き締められた。思い出したら胸がキュウッと痛くなった。