嫌われ者に恋をしました

『……かわいい声だね』

「え……?」

『笠井さんと話す時はかわいい声だと思ってたけど、今もかわいい声だね。……嬉しいよ』

「そ、そうですか」

 夢中になって、すっかり地声になっていた。そんな、課長からかわいいなんて言われたら、ドキドキしてしまう。ミノリちゃんに言われた時は冗談だと思っていたけど、課長から言われるとなんか違う。

『そんな声が聞けるなら、もっと早く電話番号聞けばよかった』

「課長は知っていると思っていました」

『え?』

「管理職の皆さんは私たちの電話番号を知っているんだと思ってました」

『……』

「……?」

『……そうだった。知ってたわ、俺』

「え?」

『はあ……、忘れてた。俺、経理課の連絡先、持ってた』

「ふふっ」

 そんなドジなことを言ってため息をつく課長なんて、普段の冷静な課長からはとても想像ができない。なんだかおかしくて、つい笑ってしまった。
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