嫌われ者に恋をしました

『今笑ったの?』

 笑ったりしたから怒ってしまったかな。

「す、すみません」

『いや、むしろもっと笑ってよ。声だけじゃなくて、笑った顔も見たいな』

 その言葉に胸が押しつぶされるような痛みを感じた。もっと笑って?私、笑ってもいいの?

 お母さんが「笑うな」と怒鳴った時の、あのお母さんの目を思い出した。……私が笑ってもいいなんて。


“ガチャッ”


「あれっ?」

『?』

 今、玄関のカギが開くような音が聞こえた?気のせいとは思えないけど。

「今、鍵が開いたような音がして……」

『え?なにそれ』

 雪菜は立ち上がって、玄関の方を覗いた。次の瞬間、扉が開いたから、あまりの驚きと恐怖に息が止まって立ち尽くした。

「や、やだ……。なんで……」

『どうしたの?』

「……瀬川さん」
< 121 / 409 >

この作品をシェア

pagetop