嫌われ者に恋をしました
『今笑ったの?』
笑ったりしたから怒ってしまったかな。
「す、すみません」
『いや、むしろもっと笑ってよ。声だけじゃなくて、笑った顔も見たいな』
その言葉に胸が押しつぶされるような痛みを感じた。もっと笑って?私、笑ってもいいの?
お母さんが「笑うな」と怒鳴った時の、あのお母さんの目を思い出した。……私が笑ってもいいなんて。
“ガチャッ”
「あれっ?」
『?』
今、玄関のカギが開くような音が聞こえた?気のせいとは思えないけど。
「今、鍵が開いたような音がして……」
『え?なにそれ』
雪菜は立ち上がって、玄関の方を覗いた。次の瞬間、扉が開いたから、あまりの驚きと恐怖に息が止まって立ち尽くした。
「や、やだ……。なんで……」
『どうしたの?』
「……瀬川さん」