嫌われ者に恋をしました
『え?なんだよ瀬川って。どうしたんだよ!』
「瀬川さん、どうして鍵、持ってるんですか?なくしたって言ってたのに……」
瀬川は玄関から不敵な笑みを浮かべて雪菜を見ていた。そんな瀬川の姿に、雪菜は目を見開いたまま動けなかった。
「この部屋、全然変わんないね」
「……や、やだっ!来ないで!」
瀬川は部屋を見回しながら当たり前のようにズカズカと家の中に入ってきて、雪菜は部屋の奥へ逃げた。
「あれ、電話中?雪菜、友達いないだろ?誰だよ」
『瀬川なのか?雪菜っ!聞こえる?』
隼人の声が胸元で握り締めたスマホから聞こえてきた。
「もしかして、松田と話してんの?やっぱ付き合ってんじゃん。俺に嘘をつくなんて、悪い子はお仕置きだよ」
「勝手に入ってこないでください!」
「松田に助けてって言わないの?まあ、言ったところで、どうせ間に合わないけど。あえぎ声でも聞かせてやれば?」
なんて恐ろしいことを言うんだろう。でも、この人なら本気かもしれない。
瀬川は躊躇なくどんどん近づいて来た。
「家から出れない休みの貴重な前日を君に捧げたのに、お礼くらい言ってもいいもんだよね」
やだ、どうしよう。
この人に抱かれたくない。もう絶対に嫌。
何としても逃げなければ。