嫌われ者に恋をしました
次の日の朝、出勤して隼人が席に着くと、雪菜がお茶を入れてくれたから驚いた。なんでお茶?
「お茶、入れてくれたんだ。片倉さんにもお茶入れてたっけ?」
「いいえ。……課長と二人だけなので、何をしたらいいのかわからなくて。営業課の時は必ずこうしてお茶を入れていたので、入れてみようかと……」
営業って女子社員にお茶なんか入れさせてるのか。ずいぶん古いな。経理の子たちにそんなことやらせたら大ブーイングだよ。
「ありがとう。でも、飲みたい時に自分で入れるから、もういいよ」
「あ、はい。わかりました」
ふと雪菜の目を見ると少し戸惑っているようだった。さすがに新しい担当になって、しかもこんな隔離された場所で上司と二人きりじゃ、戸惑うだろう。表情は変わらないけど、瞳には少し感情が出るんだな。
隼人は、雪菜に感情があることを実感して、少し安堵した。昨日は一緒に作業していても、てきぱきと動く人形みたいだった。これからは少し瞳を観察するか。