嫌われ者に恋をしました
隼人は部屋の乱れた様子をもう一度目の当たりにして、雪菜がどんな目にあったのかを思うと、はらわたが煮えくり返ってこぶしを握り締めた。
「ちょっと足を洗ってきます」
そう言って雪菜は風呂場に行った。
落ちて散らかったものを拾い上げながら考えた。瀬川は間違いなく雪菜を狙っている。なんでまた急に雪菜を狙い始めたんだろう。
資料室でも雪菜の家でも、瀬川の行動は強引というには度を超えている。瀬川のやっていることは犯罪だ。なんとしても雪菜を守らないといけない。
雪菜が戻ってきて、一緒に片付け始めたから隼人は話しかけた。
「本当に足、大丈夫か?」
「はい、ちょっと擦りむいたくらいですから」
「そう……。ならいいけど、あんまり無理するなよ。……雪菜、あいつ、いつもこんな感じだったのか?」
「……瀬川さん、ですか?」
「うん」
「そうですね……。強引なところはありましたけど、ここまで酷くはなかったような気がします」
「本当に警察呼ばなくて、良かったのか?」
「そ、そんな!大丈夫です。結果的には、何もなかったわけですし」
「何もなくはないだろ……」
強姦未遂は犯罪じゃないのか?これを許したら、あいつはまた来そうな気がする。でも雪菜自身がいろいろ警察から聞かれたり、会社の立場とかを考えると、嫌なのかもしれない。
雪菜が嫌なら俺が守るだけだけど。
あんな鬼畜のどこが良かったんだよ、雪菜。でも、もしかしたら最初のきっかけはあんな風に無理やりだったのかもしれない。