嫌われ者に恋をしました

 テキパキと片付けをすると、雪菜は立ち上がった。

「お茶、入れますね。紅茶でもいいですか?」

「あ、うん。ありがとう」

 少し落ち着いて見回すと、雪菜の部屋は本当にかわいい部屋で、こんな女の子らしい部屋の中にいると思うと、自分が異物のように思えてきて、座っているだけで罪悪感を覚えた。

 そして、この部屋に瀬川も来ていたのかと思うと、この部屋で何があったのかを考えると、何も見たくなくなった。

「どうぞ」

「ありがとう」

 雪菜の入れてくれた紅茶は甘い香りがした。

「アップルティーなんですけど、良かったですか?」

「うん、いいよ」

 まあ、紅茶なんて何でもいい。雪菜が入れてくれるなら、きっと何だっておいしいだろう。

 雪菜は紅茶を冷ますようにフーッと息を吹きかけてから一口飲むと、隼人をチラッと見て言った。

「今日は、本当にありがとうございました」

「いや、全然。結局俺、何もできなかったし」

「そんなこと……」
 
「とにかく、雪菜が無事で良かったよ」

「はい、……それに、来てくださった課長の雰囲気がいつもと違ったので、驚きました……」

「えっ?まあ、それはそうかもね」
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