嫌われ者に恋をしました
「あいつ、この家の鍵持ってるんだろ?」
「……そうですね」
「鍵はすぐに替えるべきだよ。それに鍵を替えるまで、雪菜はここにいない方がいい」
「それは、そうかもしれませんが……」
「嫌?」
「嫌ということではなくて、いいのかなと思って」
「いいよ。うちに来るのが嫌なら、俺がずっとここにいるよ。どっちがいい?」
「えっ?そ、そんな。それは……」
でも、できれば雪菜の部屋より、自分の家に戻りたかった。この部屋で瀬川の面影を感じることが嫌だった。
「どっちがいい?」
隼人はもう一度雪菜に聞いた。雪菜は答えられず、困っているようだった。
家に行ったら襲われるとか思って、俺を怖れているんだろうか?
瀬川があんなことをした今日はもう、手なんか出さないし、出せない。きっとショックだっただろうし。むしろ、俺は違うってことを主張したいくらいだ。
「できればうちに来てほしいんだけどな」
誘導するように言うと、雪菜はじっと隼人を見てうなずいた。
「……はい、わかりました」
「良かった」
「本当にいいんでしょうか?」
「いいんだよ、その方がいいんだ」