嫌われ者に恋をしました

 最初の監査は大きな営業所で、監査課だけではなく、総務課も同行することになっていた。今回は監査課二人と総務課二人。

 去年雪菜が同行した時は小さな営業所だったから、隼人と二人だけだった。まだその方が気が楽なんだけど。大きな営業所ってどんな感じなんだろう。総務課の人ってどんな感じなんだろう。雪菜は少し不安だった。

 監査を明日に控え、事前資料に目を落とす雪菜を見て、隼人が話しかけた。

「小泉、不安?」

「え?あ、……はい」

 雪菜は驚いた。どうして不安だってわかったんだろう。顔に出てしまった?それとも初めてだから不安だよねってこと?

「大丈夫だよ。総務課が規則とか労務管理を見てくれるから、俺たちは経理を集中して見れてむしろ楽だよ。量は多いけどね」

「……そうなんですね」

 雪菜には隼人が少し微笑んだように見えた。でも、もう一度見ると隼人はいつも通りの冷たい表情。気のせい、かな?
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