嫌われ者に恋をしました
横浜で一度高速を降り、すぐにまた高速に乗った。
「あれ、ベイブリッジだよ。さっきはあの上を通ってたから全然見えなかったけどね」
高速に乗ってすぐ、隼人が前方を指さした。確かにテレビで見たことのある大きな橋。雪菜は見るもの全てが新鮮で、とにかく感嘆の声を洩らすことしかできなかった。
帰り道の工場の夜景も、さっきと見る方向が違うだけなのに目新しいものに見えた。でも、今度は工場が雪菜側ではなく、隼人側に見えていたから、雪菜はあまりじっくり見ることはできなかった。
隼人の方を見るとつい、じっと前を見る横顔や、スーツの時にはわからなかったがっしりした腕に目が行ってしまって、ドキドキして目をそらした。
なんだか落ち着かない状態で、じっとラジオから流れてくる曲に耳を傾けていたら、大きな飛行機が見えてきた。
「あれ?飛行場ですか?」
「うん、羽田空港だよ。さっきも通ったけど、トンネルだったし、気がつかなかったかな」
こんなに近くで飛行機を見るなんて初めて。そう思って窓に張り付いていたら、すぐにトンネルに入ってビクッとしてしまった。
「あはは、そんなに見たかった?」
「え?い、いえ。こんなに間近で飛行機を見たのが初めてだったので……」
笑われてしまった……。
「そんな風に反応してもらえて、嬉しいよ。連れてきた甲斐があった」
ふと横を見ると、嬉しそうに雪菜を見る隼人と目があった。
「……ま、前を見ないと危ないのです」
照れたのと焦ったのとで、おかしな言葉遣いになってしまった。
「フフッ、大丈夫だよ」
隼人は左手で雪菜の頭をぽんと撫でて笑うと前を向いた。