嫌われ者に恋をしました
(4)同じこと考えてた
駐車場から入ったエントランスは明るくて、ベージュの落ち着いた雰囲気で、床はピカピカに光っていて、とにかく立派だった。
雪菜は雰囲気に圧倒されておどおどしてしまい、隼人の後ろを遅れずについて行くだけで精一杯だった。
こんなにすごい所に住んでいるとは思わなかった。私のアパートと大違い……。5階でエレベータを降りた隼人の後ろを、雪菜は落ち着かない足取りでパタパタとついて行った。
「どうぞ」
大きな扉を開けてもらって中に入ると玄関もやはり広かった。
「……おじゃまします」
雪菜が玄関に入ってきょろきょろしていると隼人は靴を脱いで早口に言った。
「ちょっとだけ片付けるから待ってて。すぐに終わるから」
そう言うと隼人はスッと家の中に消えた。
もしかしたら、婚約者の写真とかあったりするのかな。やっぱり、忘れられないのかもしれない。婚約者のために買った家に住んでいて、婚約者のことを思い出さないわけがないもの。
ドライブも二人でよく行っていたのかもしれない。もしかしたら、私と一緒に車に乗っていても、婚約者のことを思い出したりしたのかもしれない。
そう思ったらだんだん悲しくなってきて、じわっと涙が浮かんできた。
私のことだけを見てほしい。私だけの課長でいてほしい。こんなことを思ったのは、初めてかもしれない。