嫌われ者に恋をしました

「ごめん、お待たせ」

 隼人が戻ってくると雪菜が少し沈んでしまっていたから、隼人は雪菜を覗き込んだ。

「どうした?」

 雪菜は何も言わずに首を振った。その時隼人は、雪菜の左頬が少し赤いことに気がついた。

「雪菜、ここ、どうしたの?」

 隼人に左頬をそっと触れられて、逃げる時、瀬川に叩かれたことを思い出した。

「そういえば、……あの時、叩かれたのかもしれません」

「え!瀬川に?」

「あ、でも大丈夫です。このくらい平気です」

「平気なわけないだろ。ごめん、気がつかなくて。とにかく入って。何かで冷やそう」

「えっと、ホントに大丈夫なんです」

 隼人は雪菜をじっと見ると、少し怒った顔をして雪菜の手を引くとリビングに入った。

 本当に大丈夫なのに。このくらいの痛みなら見た目の赤みもすぐに引くと体が言っている。
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