嫌われ者に恋をしました
隼人は手を繋いだままリビングから台所へ行き、冷蔵庫の扉を開けた。
「何か冷やせるもの、ないかな……」
「あの、本当に平気ですから」
雪菜がそう言うと、隼人は雪菜の正面を向いて雪菜の肩を掴むとじっと見下ろした。
「雪菜、瀬川によく殴られてたの?」
「え?いえ、そんなことはありません」
「本当に?」
「はい」
開けっ放しにしていた冷蔵庫がピピッっと音を立てた。その音に雪菜がビクッとすると隼人は冷蔵庫の扉を閉めた。
隼人は手早くビニール袋に氷をいくつか入れて、タオルで包んで小さな氷枕を作ると雪菜の頬にあてた。
「こうやって少し冷やしてな」
「……はい」
隼人は雪菜に氷枕を持たせると、一本だけ出しっぱなしになっていた缶ビールを冷蔵庫にしまい、雪菜の手を引いてリビングに行った。
そのまま雪菜をソファに座らせると隼人は心配そうな目を向けてきた。
「本当に大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
繋いだ手をじっと見たまま、何も言葉が出てこなくて、二人とも黙ってしまった。時計の音だけが聞こえてくる。
気になってふと見ると、時計の針はもう2時を指していた。
「もう、こんな時間か……。俺、シャワー浴びてきていい?」
「え?あ、はい」