嫌われ者に恋をしました
監査当日、総務課からは柴崎(しばさき)総務課長と永井英太(ながいえいた)が同行してくれた。
社用車の前で待ち合わせをしていたら、やって来た柴崎課長は待っていた雪菜たちを見て、「これはこれは」と頭を掻いて言った。
「松田君。想像した以上に涼しい組み合わせだね」
「どういう意味ですか?」
冗談はやめてくださいよ、という目で隼人は答えていた。
「そりゃあ、言葉通りの意味。まあ、監査だから。いいんじゃない」
私たちが二人揃って冷たそうって意味なんだろうな。確かに二人とも暗い色のスーツだし、静かだし、冷たく見えると思う。
車は隼人が運転して行くことになった。助手席に雪菜が座り、柴崎課長と永井は後ろの席に座った。
この社用車にはナビが付いていない。雪菜は一応地図を持って来たが、結局スマホのナビを使うことになった。
「もう!この車、いつの車?」
ナビがないことに、柴崎課長が文句を言っていた。社用車の管理は総務課の仕事では?
「まあ、10年以上は経ってるんじゃないんですか?」
「ナビ買う金もないのかね、うちは」