嫌われ者に恋をしました

「ここ寝室。ベッドは一人で使っていいから」

「え?」

「俺はあっちでいいから」

「ええ!そんな、悪いです。私があっちでいいです」

「そんなことさせるわけがないだろ」

「いえ、私だって課長にそんなことさせられません」

「……どうしても課長なんだね」

「ああっ、いえ、……隼人さん」

 雪菜がうつむくと二人とも黙ってしまった。

「じゃあさ」

「はい?」

「一緒に寝よう」

「……」

「不安じゃない?」

「い、いえ……」

 何もしないと課長が言ったのだから、それは信じている。それよりも、誰かと一緒に朝まで眠るなんて緊張する。不安というより緊張しているのです、と言いたかった。

「じゃあ、電気消してくる」

 そう言って、隼人はリビングに戻った。雪菜は部屋に入っていいものか戸惑って、その場から動けずにいた。

 戻ってくると隼人は少し寂しそうな顔をして雪菜を覗き込んだ。

「やっぱり不安?」

「いえ、緊張して……」

「緊張?まあ、それはそうかもしれないけど。俺だって本当は緊張してるから」

「え?そうなんですか?」

「そりゃそうだよ」
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