嫌われ者に恋をしました
「……このおうち、何もかもが大きくて立派ですごいなーって」
「そうかな。この家は家族向けとしては普通だよ。雪菜の部屋が狭すぎるんだよ」
「そうでしょうか?」
「そうだよ。雪菜の給料だったら、もっといい家に住めるだろ?」
「そうかもしれませんが、別に不便ではないので」
「……あの家にいたら瀬川のこと、思い出すんじゃないのか?」
「え?……いえ、全然」
「本当?」
「はい」
確かにずいぶん前は思い出したこともあったけれど、最近はそんなことはない。それより雪菜は、隼人のことしか考えていなくて、瀬川を思い出す隙間なんてなかった。
「ふーん。そんなもんなのかな」
隼人のそんな言葉を聞いて、雪菜はまた寂しくなった。私は思い出さないけど、課長は思い出すのかもしれない。
「課長は……」
「何?小泉さん」
「……隼人さんは……」
「うん」
「この家に住んでいたら、やっぱり思い出すんですか?」
「何を?」
「その……、こ、婚約者のことを」
「……」