嫌われ者に恋をしました

 やっぱり黙ってしまった。聞かなければよかった。雪菜は後悔してギュッと目をつぶった。

「言われるまで忘れてた」

「え?」

「全然思い出さないよ。だいたい、彼女はここに住んだこともないしね」

「そうなんですか?」

「完成する前に買って、完成する前に別れたから」

「……そう、だったんですか」

 そんなことがあるんだろうか。よくわからない。

「もしかして、そんなこと考えてたの?」

「……はい」

「俺がこの家で彼女を思い出すんじゃないかって?」

「はい」

「俺がまだ彼女に未練があるとでも思った?」

「……はい。私に見られたくない写真とかあるのかなーって」

「片付けたから?」

「はい」

「そんなものはないよ」

 動いた気配とともに、隼人の手が雪菜の腕に触れた。

「手、貸して」

 そう言って隼人は雪菜の手を取って繋いだ。指を絡めて手を繋ぐと、隼人の手はとても大きくて雪菜はうまく握り返せなかった。
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